コラムバックナンバー
放射線治療の巨星落つ
2010年01月20日(水)
梅垣 洋一郎様
市民のためのがん治療の会
代表 會田 昭一郎

我が国の放射線治療の創世期に大きな足跡を残された梅垣洋一郎先生が、1月2日お亡くなりになりました。87歳でした。
梅垣先生はその力量を見込まれ、乞われて初代の国立がんセンター放射線診療部長に就任され、池田勇人首相の下咽頭がんの治療に当たられたことでも知られています。先生はすぐれた臨床技術のみならず、常に未来を見据えた見識で後進の指導に当たられ、多くのすぐれた放射線腫瘍医の輩出に力を注がれました。
当会の活動にも注目され、まだ創立間もない2004年7月の「市民のためのがん治療の会」ニュースレター3号の巻頭言に玉稿を寄せられました。
今、私たちが受けることのできる放射線治療の驚異的な発展の基礎を築かれた先生の偉業に思いを馳せ、心からご冥福をお祈りいたします。

放射線治療は21世紀のがん治療
梅垣 洋一郎
2004年7月(「市民のためのがん治療の会」No,3巻頭言)

私は1945年に医師免許証を頂き、1951年から1981年までの30年は病院や研究所で放射線治療医として働きました。その後の20年は健康管理医、地域の町内会長や健康管理医など職場や地域の側で働きました。この50年を振り返って見て思うことは、病気の実態を理解するには、本人だけでなく、家庭、職場そして地域の実情を知ることが必要ということでした。従って現在の私の心情は「市民のためのがん治療の会」により近いのです。
私は自分の経験から「21世紀のがん治療は放射線治療の時代になる」と予想しておりましたが、最近の研究成果や治療成績の向上はまさに予想通りになりました。なぜ放射線治療の時代になるのか、その根拠を示します。
その1は、放射線治療は精密な画像診断と精密な放射線ビーム制御の組み合わせにより治療することで、画像で見えるがんを確実に消滅することができます。更にその後の画像診断で治療効果を確認できます。放射線治療ではがん病巣だけを精密に狙い打ちするので副作用はきわめて少なくなります。
その2は放射線治療では、その計画から実行まで、すべてを誰にも分る形で記録し、検証することで、医療過誤を防止できます。治療する側と受ける側が情報を共有することは、これからの医療でもっとも大切な条件になります。

梅垣 洋一郎 略歴 1922年3月3日生
1945年9月 東京帝国大学医学部卒業
1951年3月まで 東大医学部放射線科助手
1951年4月 癌研究会付属病院放射線科医員
1955年1月 千葉大学医学部放射線科助教授
1958年2月 信州大学医学部放射線科教授
1962年4月 国立がんセンター病院放射線診療部長
1971年2月 放射線医学総合研究所臨床研究部長
1979年7月 癌研究会付属病院放射線科部長
1985年7月 日本学術会議第7部会員(3年間)
1990年9月 放射線医学総合研究所顧問
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