『堀ちえみさんの徹子の部屋出演をテレビで観て』
石川 賢一
約1年後の2020年1月7日『徹子の部屋』(テレビ朝日)に出演、初めて公の場で肉声での会話を公表したので、多くの皆さんがその発声を聞くことができた。
編集子が驚いたのは石川さんが本文で述べておられる通り、主治医から治療法の選択として手術、抗がん剤、経過観察の3つの治療法を提示されたことだ。
編集子も委員として参加して取りまとめられた「口腔癌診療ガイドライン2019年版」によれば、 舌癌4期、頸部リンパ節転移(T4a N1,2)の場合は「原発巣切除+頸部リンパ節郭清」と「化学放射線療法(超選択的動注化学療法)」があり、 石川さんが受けた超選択的動注化学療法についての説明は、テレビで堀さんが語った中にはなかったようである。 不破信和先生による超選択的動注化学療法で見事切らずに舌がんを克服した石川さんが仰天したのも無理はない。
実際に診察してみれば切除以外に選択肢はなかったのかもしれないが、少なくとも手術以外の治療法を検討してみる手もあったのではないかと思う。
前回の「がん医療の今」で編集子は「年頭に当たって」の中で、「自分の命、治り方、健康は、自分で守る」という基本について述べ、 そのためには「セカンドオピニオンの活用」、「他科の治療法についても情報収集する」、「治療法選択には『治り方』、つまり治療後のQOLに留意して」などについて述べた。
『年頭に当たって』
http://www.com-info.org/medical.php?ima_20200107_aida
「『口腔癌診療ガイドライン』検討委員会も構成員はほとんどが外科で、放射線治療医は不破先生など数名しかおられない、これでは治療法は手術が第一選択に傾くのは当然ではなかろうか。
一度は自殺まで考えたという石川さんが不破先生の超選択的動注化学療法と放射線治療併用療法によって見事に完治された経験に照らし手記を寄せられたので、ここに皆様にご紹介する次第です。 なお、石川さんの事例は「市民のためのがん治療の会」HPの「がん医療の今」に掲載されているので、併せてご高覧いただければ幸いです。
『がん治療体験記、私の場合』(石川 賢一)
http://www.com-info.org/tiso.php?so_20170117_ishikawa
『進行舌癌に対する非切除療法の開発』(不破 信和)
http://www.com-info.org/tiso.php?so_20170124_fuwa
有名人の社会に訴える影響力はとても大きいです。 しかし、彼女の例が社会の常識と勘違いされぬ様FBに投稿をします。 長文になりますが、より多くの方に見て頂きたい。
今となっては思い出したくも無い、見たくも無い私自身の写真もUpします。 汚い写真もありますがご勘弁頂きたい。
冊子は、私がセカンドオピニオンでお世話になった「市民のためのがん治療の会」の会報誌です。 私の症例に関して記載されている箇所が多いのでご覧下さい。
写真は順に、 2013年4月の舌がんに気づく五ヶ月前の私の写真、 青服は2016年4月の退院後三ヶ月後の写真、 白シャツが2019年8月の私のスナップ写真、 そして最後の2枚が2015年10月の入院時の私の舌がんに侵された箇所の写真です。
因みに現在は以前と変わらず美味しく食事が出来、また会話は退院直後は唾液が出なくなってしまった為連続5分以上の会話は水を飲まないと不可でしたが、 それでも舌の全摘を告知された人とは判らぬほど以前と同じ様に喋れました。 今では居眠り中ヨダレを垂らす程迄回復しています。 退院直後仕事上の知人宛電話をした際、「以前と変わらない石川さんの声が電話の向こうから聞こえて来たので驚いた。」と言われたのを覚えています。
テレビを観て最大に驚いた事は、彼女の治療の選択肢が、
- がんに侵された部分の舌切除+太ももの肉を移植する再建治療。
- 抗がん剤による全身化学療法。
- 何もせずにただ見守る療法。
何故これらの選択肢しか無かったのか。 主治医が口腔外科であった事、1月にがんを公表し、2月に手術から推測するに、主治医から示された選択肢から、しかも急いで選択したとしか考えられません。 良くありがちなのが、「急いで手術しないと死にますよ。」の医者の一言です。 舌の6割以上を切除したにも関わらず、唾液を飲み込むのも不自由だろうに、退院後あそこまでヨダレを垂らす事なく喋れる様になったのは、ものすごい努力の結果だと思います。 しかし以前の様に歌を歌うとなると難しい事でしょう。
舌は筋肉の塊であり、肉とは違います。 つまり彼女の舌の動く部分は、喉の奥の方のみだと思われます。 舌の可動部の6割以上は唾液も出ず、動かず、という事です。
私の場合は、彼女より重症で、舌の中心線(ミッドライン)を超えていた為、切除の場合は、全摘です。 当然私の握り拳大に腫れ上がった頸部のリンパも切除です。 舌の全摘は、誤嚥(ごえん)を防止する為、喉頭(声帯)も切除します。 つまり、生涯一切喋れず、食べられず、声も出せない状態になり、多くの場合は、精神的に異常をきたす様です。
当初私は、「小線源治療」を考えており、東京医科歯科大付属病院の渋谷先生宛お邪魔しましたが、彼は退職しており、また小線源治療は不可との事で、口腔外科に回されました。 当然切除は考えていなかったのですが、担当医の発言は、以下の通りでした。
「放射線治療だと舌が左右対象で無くなりますよ。 舌を舌根から切除しお腹の肉を移植した方が綺麗に仕上がり良いと思いますよ。」この時喉頭の切除も必要である事は告げられず、又その担当医は、私の顔を一切見ずに説明していました。
今思い出してもとても恐ろしいです。 あれだけの説明で、早く治療しないと死にますよと言われ舌を全摘する人が世の中には少なからず存在するわけです。
動注のためこめかみの動脈から抗がん剤を入れる+放射線治療の欠点は、以下の通り、
- 味覚が全くなくなり私の場合は完全に戻るのに3年程かかった。
- 口の周りに放射線を照射する為、その辺りの皮膚がショボショボになる。
- 歯根にも照射されてしまうため歯が抜ける。
- 人によっては、唾液が生涯全く出なくなってしまう。
私の場合、医師陣が驚く程唾液の出が良く、これはラッキーでした。 歯は三箇所から4本抜けましたが、二箇所はブリッジにて、一箇所は奥から二本続けて抜けた為、部分入れ歯にて対応。
どの様な治療をしても、がんは少なからず人体に傷を残します。 どの傷を選ぶかは人それぞれだと思いますが、抜けた歯は極端な話、全部抜けても総入れ歯で元気に生きていけます。
切除した舌はどうにもならない。
また私が受けた治療法だと、声帯から発生した喉頭がんにも有効という事です。 つまり、シャ乱Qのつんくさんは、声を失わずに済んだ。
全ての優秀な医者は、東京及び首都圏で活躍している訳ではありません。 又、有名な病院なら何とかなる訳でもありません。 身内及び知人に医者が多い。これらの方々は要注意です。 医者は極めて専門職です。研究者の様なもので隣の医者の情報は何も知りません。 客観的に広い視野でものを俯瞰し判断できる所にてセカンドオピニオンを受けることのみをお勧めします。 因みに私が受けたのと似た様な治療は、横浜市立大付属病院でも行なっていますが、明確にがんの箇所に抗がん剤を注入出来る技術を持っているのは、伊勢赤十字病院の不破医師のみです。 つまり、天皇陛下が私と同じ様な症状になっても、彼を東京に連れて来て専任とする訳にも行かないでしょうし、主治医がおられる陛下が三重まで入院するとも思えないし、他の一般的な治療法しか選択出来ないという事です。
日本の医療制度は誠に素晴らしく、皆に平等です。 高額な先進医療がいい訳でもなく、有名病院にて治療するのがいい訳でも無く、ケースバイケースで日本全国に優秀な医者が点在している事を皆さんに知って頂きたい。 以上、書き殴りの文章で失礼。おわり。