市民のためのがん治療の会
市民のためのがん治療の会

『学術集会で語る:がん教育と検診率向上の取り組み』


市民のためのがん治療の会滋賀県支部長
よりよいがん医療をめざす近江の会顧問
藤井 登

私は滋賀県長浜市で「市民のためのがん治療の会滋賀県支部」と「よりよいがん医療をめざす近江の会」の活動を行い、がんの治療方法は一つではないこと、早期発見・早期治療の啓発に尽力しています。 2006年11月、私は舌がんのステージⅡと診断されましたが、北海道がんセンターで舌を切除せず放射線治療(小線源治療)によって克服しました。 当時、学習塾を経営していた私にとって、話せなくなることは職を失う恐れを意味していました。 しかし、幸いにも治療後17年以上が経過し、再発や転移もなく、会話や味覚、唾液のコントロールに支障なくいつも通り過ごしています。


この経験から、がん治療には複数の選択肢があり、早期発見と早期治療の重要性を広めたいという強い思いが生まれました。 そこで、2015年に「市民のためのがん治療の会滋賀県支部」後に「よりよいがん医療をめざす近江の会」を設立し、がん患者さんやそのご家族を支える活動を始めました。 年間15回以上の出前授業や講演を通じてがん教育を推進していますが、30代から40代の小中高校生の保護者世代におけるがん検診率の低さは、依然として大きな課題です。

その課題に対処するため、より強い発信力を求めて市議会議員に立候補し、現在二期目を迎えています。 現在健康福祉常任委員長として、がん検診の重要性や治療の選択肢について市民に訴え続け、検診率向上に貢献できていることに手応えを感じています。 また、日本癌治療学会認定がん医療ネットワークシニアナビゲーターとして、がん患者さんやそのご家族を適切な医療機関やがん相談支援センターに繋げる役割も果たしています。 この活動を通じて、患者さんが安心して医療にアクセスできる環境づくりに努めています。

さらに、月に一度開催している「ハートケアサロン」では、がん患者さんやそのご家族の心のケアに力を注いでいます。 このサロンは、がん患者さんやサバイバー、専門医、薬剤師、そして認定がん医療ネットワークナビゲーターが一堂に会し、悩みや不安を共有できる温かい場となっています。 サロンには多くのリピーターが通い続け、支え合いの雰囲気が参加者にとって心の拠り所となっています。

ある日、余命を宣告された方が再発を恐れる他の参加者に「今を大切に生きることが何よりも重要だ!」と語り、その深い言葉が多くの参加者に感動と勇気を与えました。 涙ながらに感謝の言葉を述べる方もおり、こうした瞬間がサロンの支えとなっています。

これらの活動が評価され、2024年10月24日から26日まで福岡市で開催された第62回日本癌治療学会学術集会に講演者として招かれる機会を得ました。 学術集会では、「がんを知り、がんと向き合い、未来を生きる」というテーマのもと、私どもの活動についてお話ししました。 「よりよいがん医療をめざす近江の会」の設立経緯や、小中学校や企業、自治会でのがん教育活動、がん検診率向上のため市議会議員になった経緯、さらに「ハートケアサロン」の取り組みについて紹介しました。

学術集会後、他地域のがん教育関係者と交流を深める中で、長浜市におけるがん教育の進展が注目されていることを実感しました。 これからも積極的に取り組み、がん患者さんやそのご家族の力になれるよう努力を続けてまいります。

私どもの活動を通じて、がん患者さんやそのご家族が安心して生活できる環境を提供し、希望と支えの場をさらに広げていくことが、これからの目標です。 一人でも多くの方が笑顔で過ごせるよう、全力でサポートしてまいります。


藤井 登(ふじい のぼる)

2006年:舌がんステージⅡと診断。北海道がんセンターにて西尾正道医師の小線源治療により完治。
2015年:「市民のためのがん治療の会滋賀県支部」設立。全国で講演活動を展開。
2018年:長浜市議会議員に初当選、日本癌治療学会認定がん医療ネットワークシニアナビゲーター認定。
2019年:「よりよいがん医療をめざす近江の会」設立。小中学校、企業、自治体で出前授業や講演活動を実施。
2022年:長浜市議会議員当選(2期目)
2025年:健康福祉常任委員長として活動中。
現職:長浜市議会議員、市民のためのがん治療の会滋賀県支部長、よりよいがん医療をめざす近江の会顧問、稲穂塾塾長。
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