
『第62回日本癌治療学会学術集会を振り返って』
市民のためのがん治療の会滋賀県支部長
よりよいがん医療をめざす近江の会顧問


2024年10月24日から26日にかけて、福岡国際会議場などで開催された第62回日本癌治療学会学術集会に参加し、「よりよいがん医療をめざす近江の会」の顧問として講演する機会をいただきました。 本学術集会は「がんを知り、がんと向き合い、未来を生きる」というテーマのもと、約350もの多彩なプログラムが展開され、がん医療の最新知識と未来への可能性が示される場となりました。 その中で、私は日本癌治療学会認定がん医療ネットワークナビゲーターの交流会において、自身の経験と地域での活動についてお話ししました。
私は2006年、舌がんステージIIと診断されました。 当時、学習塾を経営していた私にとって、最も恐れていたのは、舌を切除して話すことができなくなることでした。 生徒たちや保護者との会話が日常の一部であり、仕事の命綱でもあったからです。 しかし、幸運にも放射線治療によって舌を切除せずに病を克服することができました。 再発や転移もなく、現在に至るまで、会話や味覚に問題はありません。 この経験は、私の人生を大きく変えました。 そして、がん治療には多様な選択肢があることを伝え、早期発見と早期治療の重要性を広めたいという強い使命感が芽生えたのです。
2015年に「よりよいがん医療をめざす近江の会」を立ち上げ、小中学校での出前授業や企業研修、地域での講演活動を開始しました。 特に、30代から40代の子育て世代のがん検診率が低いことを課題と感じ、この世代に検診を促すため市議会議員となる道を選びました。 現在では、長浜市の働き盛りの保護者の検診率向上を励みに、がん教育を通じて命の大切さや早期発見の意義を伝える活動を続けています。

講演では、これまで取り組んできた様々な活動を紹介する中で、私どもが主催する「ハートケアサロン」の取り組みについてもお話ししました。 このサロンは、がん患者やそのご家族、また元患者が安心して集える場として毎月開催しているものです。 ある日、余命宣告を受けた一人の参加者が「今を大切に生きることが何よりも重要」と語ったとき、その言葉が場にいた全員の心を打ちました。 その瞬間、多くの人が涙し、改めて命の尊さと日々を大切に生きる意義を深く感じ取ったのです。 このエピソードは、私にとっても忘れられない思い出の一つです。

今回の学術集会を通じ、多くの専門家や患者団体の方々と交流する中で、滋賀県長浜市のがん教育が全国でも先進的であることを実感しました。 これは一人では成し得ない成果であり、多くの方々の協力と支えがあってこそ実現したものです。 これからも地域に根ざした活動を続け、がん患者やその家族にとって心の支えとなる取り組みを拡充していきたいと考えています。
私は、自らの経験を通じて、「がん」と向き合う全ての方々に、少しでも役立つ情報や希望を届けられるよう、これからも全力で活動してまいります。 一人でも多くの方が自分の命と未来を大切にするきっかけとなるよう、がん教育と啓発活動に情熱を注ぎ続けます。 この想いが未来を照らす小さな光となり、誰かの支えとなることを信じて。

2006年:舌がんステージⅡと診断。北海道がんセンターにて西尾正道医師の小線源治療により完治。
2015年:「市民のためのがん治療の会滋賀県支部」設立。全国で講演活動を展開。
2018年:長浜市議会議員に初当選、日本癌治療学会認定がん医療ネットワークシニアナビゲーター認定。
2019年:「よりよいがん医療をめざす近江の会」設立。小中学校、企業、自治体で出前授業や講演活動を実施。
2022年:長浜市議会議員当選(2期目)
2025年:健康福祉常任委員長として活動中。
現職:長浜市議会議員、市民のためのがん治療の会滋賀県支部長、よりよいがん医療をめざす近江の会顧問、稲穂塾塾長。