市民のためのがん治療の会
市民のためのがん治療の会
西尾先生より

『「市民のためのがん治療の会」の会員の皆様へ』


北海道がんセンター名誉院長
市民のためのがん治療の会
代表協力医 西尾正道
西尾先生が北海道がんセンターを定年退官されました。
当会としては代表協力医として引き続きご指導ご協力いただくことに変わりはありませんが、やはりなんといっても大学卒業後ずっと勤務されました北海道がんセンターをご退官されますのは、先生にとりましても一区切りでございましょう。ご就任当時は放射線治療についての理解がほとんど得られず、当時は国立札幌病院ということで高額な放射線治療機器も導入できないという多くの困難のなかで小線源治療などに活路を見出され着実に実績を積み重ねられ、北海道をわが国有数の放射線治療先進地域に導かれました。また、特にこの10年近くは、北海道のみならず全国レベルでのがん医療全般についてのリーダとして、文字通り獅子奮迅のご活躍をなさいましたことは皆さんの良くご存じのとおりです。
3・11以後は福島原発事故後の人々の放射線被害防止のために、オピニオンリーダーとしてだけでなく、実践活動を通してもご活躍中です。さらにご退官後は超音波検査装置を購入され、福島等の子供達の甲状腺検査を出向いて行うなどのご予定とのことで、またまたメディアに追いかけられそうです。
みなさんと共にこれまでの西尾先生の「市民のためのがん治療の会」のみならず全国に及ぶ献身的なご指導ご協力に心から御礼申し上げますと共に、これからも当会の協力医として、引き続きご指導ご協力いただきますようお願い申し上げます。今後のご活躍とご健康を祈りあげます。(會田)
 2013年3月で定年退職いたしました。1974年3月に札幌医科大学を卒業後、国立札幌病院・北海道地方がんセンターで2年間研修医として勤務し、その後もそのまま勤務し、がん治療一筋の医師人生に一区切りをつけることができました。これも皆様のご指導・ご支援のたまものです。本当にありがとうございました。
 3月16日には会員の皆様が「感謝と懇親の夕べ」を開催し、北海道内はもとより、高知や名古屋や山形などの遠方からも沢山の皆様が参集して頂きました。感謝の言葉もありません。
 当会も本号で通巻38号となり、年4回刊行ですので、10年目となります。よく続いていると思いますが、これも會田昭一郎会長の優れた事務能力と志のたまものです。また長年のがん医療に関わってきたことにより得た人脈が財産となり、全国の多くの医師の皆様が協力してくれた事によります。心から感謝申し上げます。
 日本のがん医療では放射線治療は上手に活用されていなかった現状を改善すべく、当会は放射線治療に軸足を置いて医療情報を提供し、納得のいくがん治療を受けることができるようにと思い活動してきました。またセカンドオピニオンも千人以上を扱ってきました。それにより治療に関する情報を得て決断したり、参考となった方もおられ、少しは皆様のお役に立つことができたものと思います。
 今後の生活は、月曜日の午前中は北海道がんセンターで「がん何でも相談外来」をボランティアとして継続します。また北海道厚生局の業務として行っている道内医療機関の臨床研修の審査専門員としてお手伝いする予定です。また火曜日は、美専学園北海道医薬専門学校の学校長として、看護師や診療放射線技師の育成に関わり、講義等で時間を使う予定です。その他に、週の後半は原発事故による健康被害の問題に取り組む予定です。そのため超音波検査装置を購入しました。子供達の甲状腺検査を出向いて行う予定です。
 TPPへの参加により、今後の日本の医療は、経済力のない人達にとっては更に厳しいものとなると予想されます。政府の政策裁量権が大きく損なわれるからです。具体的には、政府の政策自由度が狭まり、国民皆保険制度による診療内容の縮小があります。これは医療費の支出を抑えようとする政府の思惑とも一致します。また営利法人が認められることにより医療費が上昇します。さらに薬価を決定する際に、政府とは別の検討機関が評価することにより、薬剤費が高騰します。
 超高齢化を迎え社会保障をどのように構築するのか、また慢性的低線量放射線被ばくの人体への影響など、人類にとって歴史上初めての課題に日本の社会は直面しています。皆様もこうした問題に関心を持って自分達の生活と健康を維持して頂ければと思います。
 今後もささやかながら当会の活動を支援したいと思いますが、日常臨床から離れたため、少しはペースダウンしたいと思っています。またこれを機会に代表協力医を沖本智昭先生に交代します。今後ともよろしくお願いいたします。
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