市民のためのがん治療の会
市民のためのがん治療の会
終末期の延命治療など、現実の医療ケアーの実践に根差した倫理を多職種共同で考える

『日本倫理臨床学会発足』


日本臨床倫理学会
理事長 新田 國夫
このところNHKなどでも「“凛(りん)とした最期”を迎えたい~本人の希望をかなえるには~」(クローズアップ現代2013年4月3日(水)放送)、「それでも“延命”を ~揺れる 人生最期の決断~」(特報首都圏4月19日(金)放送)など終末期の延命治療についての関心が高まっている。 そこで東京・国立市医師会長で永年在宅医療に積極的に取り組んでおられ、このたび日本臨床倫理学会理事長に就任された新田國夫先生に、まずは学会設立についての背景等についてご寄稿いただいた。 なお、新田先生は上記クローズアップ現代2013年4月3日(水)放送)にコメンテータとして出演された。
(會田昭一郎)
このたび、臨床に根差した倫理をテーマに、日本倫理臨床学会の第一回の年次大会を開催することができました。日本臨床倫理学会は、現実の医療ケアーの実践に根差した倫理を多職種共同で考えていこうという趣旨で発足しました。現在日常臨床における判断が様々な問題を発生する中で、直感や感情からだけではなく、医学的にも倫理的にも、さらには法的、社会的、文化的にもバランスのとれた判断が行われるように、臨床に基づいた倫理を作ることが重要で解決していかねばならないことと考えました。この問題は医療者のみの問題ではないために、異なった分野の意見に真摯に傾聴し、相互討議をすることが重要です。医療やケアーの実践にかかわるものは、患者さんや家族、そしてそれらの人々の、おかれた状況や生活など、すべてを考慮して、より適切な臨床上の決断をしています。その中で患者さんや家族とともに悩みともに苦悩する状況が増えています。医療の技術革新は善を基本として提供してきた医療技術が必ずしもその結果を得ないことが出現してきているからです。時代の流れによる、価値観の変化に応じた医療やケアーを実践することが必要であります。現在日本は世界一の長寿、高齢社会に直面しています。その結果2025年には年間死亡者が160万人に達する多死の時代に直面することになります。そして核家族化により家族の介護力は低下し、医療、住居、介護、介護、福祉、保健の総合的判断が求められます。患者を、ある臓器に病気を持った人として見つめるだけではなく、一人の生活者として見つめていかなければならなく、医療的内容も臓器医療のみではなく、一人の人としての均衡のとれた支える医療が求められます。このような価値観の変化を認識して日常の医療ケアを実践することによって患者さんは自身の価値観に沿ってより自分らしく生きることができるようになるだろうし、わたくしたち医療者もまたそのように変容しなければいけない。自分のことを自分で決めることができなくなってくる高齢者も増えてくることから、今後の治療方針の決定に際して家族等の代理判断者による意思決定プロセスを密室にしないでより適切なものにするための倫理的配慮も重要になってきます。たとえば終末期の延命治療の問題、直接言及する法律 はなく、また単に倫理原則を適用すれば問題解決につながるものでなく、関係者間の対話を円滑にし、倫理問題点を明確にすることにより、方向性が見えてくると考えています。



略歴
新田 國夫(にった くにお)
1967 早稲田大学第一商学部卒業後、1979 帝京大学医学部卒業。  帝京大学病院第一外科・救急救命センターなどを経て1990 東京都国立市に新田クリニック開設 在宅医療を開始、1992 医療法人社団つくし会設立 理事長に就任し現在に至る

現在 日本臨床倫理学会会長、全国在宅療養支援診療所連絡会会長、福祉フォーラム・東北会長、福祉フォーラム・ジャパン副会長、北多摩医師会会長

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