市民のためのがん治療の会
市民のためのがん治療の会
患者として、ピアサポータ―として

『がんピアサポーター研修を受けて』


「市民のためのがん治療の会」会員 菅野喜久江
福島県福島市
菅野さんは「市民のためのがん治療の会」の会員で会を積極的に支えて下さっておりますが、リレー・フォー・ライフやがんピアサポーターなど、地域で他のがん患者のためにも活動しておられます。がん患者としてだけではなく、高齢社会では何か社会的なことなど、人のために役立つ活動をする=自分の活動が役立つことを実感することは、自身の健康のためにも大変良い影響を及ぼすというような研究結果も出てきているようです。
いくつになっても何か役割がある、何か世のため人のためになっているということは、健康にも良いと思われます。
ただ、あまり無理をして活動すると、逆にマイナスになると思われますが、菅野さんはご自分の健康状態なども良くお考えになりながら、できる範囲で活動しておられるようです。こういう面でも菅野さんの活動は、大いに参考になります。(會田 昭一郎)
福島県では、24年度厚生労働省の委託事業を受け、ガン患者の会「ひいらぎの会」が主催しピアサポーター研修が行われた。私は退職後のライフワークの1つに、体力を余り使わず、今までの経験を生かして、何か役に立てることが無いかと考えていたので、早速受講した。
① ピアサポートとは何か
② より良いコミュニケーションの為に
③ 知っておきたい基礎知識
について学んだ後、
④ DVDにより「模擬相談」(シナリオ)を見、後に2人組になりロールプレーを行った。

ピアサポートの定義は体験を共有し共に考えることである。
Ⅰ治療の事
Ⅱ気持ちの事(鬱になり易い)
Ⅲ生活の事(仕事、金銭、家族)などpeerの話を良く聴き、安心感を持って もらう事が大切である事
その際のサポーターの活動として
○じっくり話を聴く~ 総合的に「こう考えているのですよね」と確認する。
○共に悩み、共に考える~サポーターの考えを押し付けない、(焦っているような場合は落ち着かせる)
○相談出来る窓口や専門家の情報提供をする(主治医の先生に良く相談しては?や、セカンドオピニオンというのも…など)
○サポーター自身の体験を良く整理しておく

※話を聴く場合の注意点として、
●指導的な意見や医療行為に関する内容に踏み込まない
●「それはダメ、すべきでない」という言葉は禁句

◎「お役に立てることは精一杯サポートさせていただきます」
◎「一緒に考えましょう」 「一人でがんばりすぎてはいませんか」
◎「大変でしたね、お辛かったでしょう」
◎「日常生活に戻っていく中で少しずつ不安が薄れていくのではないでしょうか」
などの言葉で安心感を感じてもらう。面会時の机も正面に座るより¬型が良い

二人組でのロールプレーで感じたこと
・話を聴くとき相手の目をみたり表情の観察も必要だと思う(メモを取ろうとして、下ばかりむいてはダメ)
・又聴く側の表情も大切である

ピアサポーター側も傷つき、ピアサポートが必要な場合がある
ピアサポーターには限界があり、解決出来ないことも多いので、専門の機関につなぐ事が大切である。

この他に傾聴ボランティアや終末期の緩和ケアのボランティアなどの研修も受けたが、基本は同じで自分の意見を押し付けない、励まさない、脅かさないは、病んでいる人とのコミュニケーションに限らず、日常、心がけていようと思う。


 そこが聞きたい
Q 菅野さんは平成22年に「市民のためのがん治療の会」にご入会になり、その後も当会の活動には積極的にご参加いただき会を支えていただき、感謝いたしております。ご入会のきっかけはご自身のご病気でしたでしょうか。

A そうです。がんとわかった時、手当たり次第に読んだ本に、こういう会があり、お勧めすると書いてありましたのですぐに申し込みました。

Q がんを考える「ひいらぎの会」と言えば亡くなられた前の代表世話人小形武さんのご協賛もいただき、平成20年9月14日(日)に郡山の総合南東北病院総合南東北病院で講演会をさせていただくなど、大変お世話になりました。福島でがん患者会というと「ひいらぎの会」と言われるように有力な団体ですね。

A そうだと思います。私は事情あって「ひいらぎの会」の会員ではありませんが、この会で必要とされることがあれば、協力させてもらうつもりでおります。

Q 「今までの経験を活かして」ピアサポータ―として活動しようと思われたそうですが、お仕事との関係はどのようなことでしょうか。

A 45年間経営した会社を一昨年引退し、今は隠居の身です。ピアサポーターとしても、その他の活動もあくまでもボランティアとして、働かせて頂きたいと思っています。

Q ピアサポータ―というのは一般的には同じ個人的課題を抱える人同士が集まるミーティング形式の活動で、個人的な問題を抱える人が少数であるほど、なかなか普段は悩みなどを口にしにくいので、参加した方には役に立つと言えましょう。なかなかうまい日本語が見つかりませんが、なんでも横文字は余り良くないと思います。ピアサポータ―と言っても、すぐに上のようなことが理解できないと思います。

A おっしゃる通りだと思います。他の会では「お茶の飲まない会?」という精神障害者当事者とその家族の会や、高齢者のお話を高齢者が聴く「話そう会」など分かりやすさで、気軽に集まっている会もあります。

Q 患者会の活動を始めて驚いたのは、会の代表者が会員の治療の相談に乗っている、と言われるケースが多いですね。自分の治った治療法だけの経験で、医学的なアドバイスをしたりしている。これはギリギリ言うと医師法に抵触することでもあるでしょうし、うっかり素人のアドバイスで間違った治療を選択したりすると、大変ですね。当会は全くそういうことをしないで、医学的なアドバイスはご承知のように当会の協力医のセカンドオピニオンを受けていただくようにしています。

A その通りですね。ここが重要なポイントだと教育を受けました。

Q 菅野さんのような方が、ご自身のご経験を踏まえて、相談者と同じ立場で一緒に考えて差し上げるのは非常にいいことだと思います。

A ありがとうございます。まだまだ青葉マークの私ですので、「共感疲労」にならないよう気をつけなければと思っています。

Q 私も「市民のためのがん治療の会」に問い合わせがあると、「ご心配ですね、『ご一緒に』考えましょう」と一言付け加えます。そうしますと、「一緒に考えていただけると言われて、嬉しかった」と返信があることが多いです。

/A そうですね。どんなにか安心される事でしょう。

Q ますますのご活躍をお祈りします。このたびはご寄稿ありがとうございました。



略歴
菅野 喜久江(かんの きくえ)

1943年1月生まれ 71歳
1964年結婚 以後2男2女を育てながら夫の建築設備業を手伝う。
1988年夫の会社の代表取締役に就任、同時にハウスクリーニングの会社を立ち上げる。
2010年4月腎臓がん手術、抗がん剤治療
2011年3月東日本大震災の、放射能汚染によりハウスクリーニングの会社の重要な管理職の女性社員が次々避難し退職、人材不足に陥る。
2013年この会社を廃業、同時に建築設備業の代表者を退職。
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