市民のためのがん治療の会
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国民の身体、生命、財産を守るのが国ではないか?

『怖い中国食品、 不気味なアメリカ食品』


奥野 修司 / 徳山 大樹
かつて食料は「食は命」という考えで尊崇の念を持って大切にされていた。植え付けや収穫時などの祭りなどはその名残だ。 ところが食料も市場経済に巻き込まれると次第に大きさ、収穫量の増大などに力点が置かれ、農畜産物の工業化が進行している。
こうして他者、就中外国への輸出品などについては、安全性が全く顧みられなくなった。 編集子の経験では、日本国内でも農家の中には販売用の作物と、自家消費用とは分けていて、 販売用には農薬を使うが、自家用には使わないというやり方をしている人も多いようだ。
アメリカからの輸入牛肉に多量の女性ホルモンが含まれていることなどについては、当会の西尾顧問がかねてより再三指摘しているが、 この度、奥野 修司 / 徳山 大樹両氏が「怖い中国食品、 不気味なアメリカ食品」を上梓された。 ここに著者並びに講談社のご許可を得てその「まえがき」をお示しすると共に、本書のご紹介をし、ご購読をお勧めする次第です。

なお、本稿は何回もご寄稿いただいております堂園メディカルハウス 院長 堂園 晴彦先生からのご投稿です。堂園先生の監修で掲載いたします。
(會田 昭一郎)

100年後――

そんな先でなくても、せめて20年、30年後のこの国のかたちを考えるのが政治家や官僚だろう。 ところが彼らの頭の中にそんなことは寸分もない。20年どころか、1年先もよくわからない。それが食べ物となるとさらに鈍感になる。

鳥インフルエンザのように、国民が高熱を発して亡くなったりすれば大問題だが、 輸入された食料品が重金属に汚染されていたり女性ホルモンが大量に残留していても、食べた人に何らかの症状があらわれるのは早くても20年、30年後だ。 それも、食べたら有意にがんなどの疾病を発症させるというエビデンスもない。 だからといって、病気になるかどうかを調べるために、20年も30年も食べさせられるかというと、そんなことは倫理的にもできるはずがない。 エビデンスがないから、輸入が制限されることもないだろう。 むしろ輸入を制限することで、相手国から抗議されることは避けたいから、わかっていても見て見ぬふりをするかもしれない。 国民ががんになったところで、「それは自己責任」と言い逃れもできるからだ。

本書で触れるが、アメリカから輸入される牛肉には、国産牛よりも600倍もの女性ホルモンが含まれている。 そのホルモンは日本国内で禁止されているものだ。

思春期の子供たちが大量の女性ホルモンを摂取すれば、 将来においてがんを始めとしたさまざまな病気の原因となる可能性があると指摘されても、前述のように確固としたエビデンスがあるわけではない。 だからというわけではないが、正確な計測機器で食品に含まれる女性ホルモンを測ろうともしない。 なぜなら、計測すれば輸入禁止にせざるを得ず、そうなればアメリカと必ずトラブルになるからだ。 アメリカとひと悶着を起こしたくないゆえに、日本人が日本人の未来を潰している。なんということだ!

中国からやってくる食べ物もそうだ。たとえば、日本人の子供が、中国の遺伝子組み換え米や有機塩素が濃縮した鶏肉を食べ続けたら何が起こるだろうか。 多少の予備知識があれば、決して安全でないことは予測がつくはずだが、国家として調べようともしないし、法律で取り締まろうともしない。

2018年4月に廃止される主要農作物種子法(以下「種子法」)だってそうだ。 米・麦・大豆などの種子は食用として重要であり、種子法はその開発・普及を都道府県などに義務付けるかわりに、種子の遺伝資源を守り、安い価格で提供してきた。 それを廃上し、これまで蓄えられてきた種子情報は民間に譲渡されるという。種子の価格は確実に上昇するだろう。 喜ぶのは、種子ビジネスで大儲けしている海外の巨人バイテク企業だけなのではないか。 世界中が種子の遺伝情報を守ろうとしているのに、日本は逆にそれを放棄してしまうなんて、どうかしてるとしか思えない。 種子が消えれば、食べ物も消えるのである。いったいこの国の指導者はどこを向いているのだろう。

これらは、20年、30年をスパンとした見えない戦争と同じだ。

今10歳の子供が、30歳、40歳になって重篤な病気になったところで、それが10歳の時から食べ続けた食べ物に原因があるなどとは誰も証明できないだろう。 重篤な病気になっても、その責任を負うのは本人である。それが嫌なら自分の未来は自分で守る、あるいは子供の未来は親が守るしかない。 つまり、危険と判断した食品を意識的に食べない、思春期前の子供たちには食べさせないことだ。

それには何がどうなっているか、憶測や感情論ではなく、事実に基づいた知識を持つことが最大の武器となる。 つまり、私たちが口にする食べ物が、誰によって、どこで、どうやって作られているかを知ることだ。

食べ物というのは、食べたらエネルギーになるだけでなく、タンパク質はアミノ酸に消化されて腸管から吸収され、体の中の細胞のアミノ酸と入れ替わる。 それも一時的ではなく、恒常的に入れ替わっているのだ。出来損ないの食べ物を食べたら、私たちの体は出来損ないの体になっていくということである。

数多くある輸入食品の中で、中国産とアメリカ産を取り上げたのには理由がある。

中国で農業指導したことのある人物にこう言われたことがあった。

「食の安全とは、生産者が消費する人を好意的に見ているか嫌悪しているかの違いだと思っています。 嫌悪していたら毒を入れても平気です。中国人は日本人を嫌いだし信用していません。アメリカ人は日本人を見下しています。 だから、汚染された土壌で作られたものでも平気で売るのです。輸入食品なしに日本人の食生活は成り立ちませんが、私はできるだけ中国産とアメリカ産は食べないようにしています」

実際に中国で取材してみれば、日本人を嫌いかどうかより、彼らから人間の生命を支えるものを作っているという意識が感じられなかったことのほうが恐怖だった。 食べ物というよりも工業製品、それも粗悪な製品を承知で作っている。工業製品なら、遺伝子を組み換えようと、違法の農薬を撒こうと罪悪感はない。 いまや中国人が信仰するのは仏教や儒教や道教などではなく、お金だといわれるが、お金になりさえすれば何を売ろうと勝手だろという理屈かもしれない。

とはいえ、今の日本人の食生活から中国産とアメリカ産を排除するのはまず不可能だ。 たとえばエンニクだが、青森産と中国産ではびっくりするほど値段が違う。ニンニクだけではない。 あらゆる食品が安いから条件反射のように手を出してしまうが、そのとき「いや、待てよ」と手を引っ込めるかどうかの違いはどこにあるのか。 もちろん購入する人の経済力もあるが、私には知識と想像力が大きいように思う。その食品がどんなところで作られたか、それを食べ続けたときの未来を想像できるかだ。 私たちは想像力まで提供できないが、作られた現場をイメージできる材料やデータを提供することは可能だ。

中国の生産現場を何度も取材したのは、アメリカと違って水産物や野菜、加工食品など直接口にする食品が多く、 日本人の胃袋とダイレクトにつながっているからであり、よりリアルにイメージしてもらえると思ったからである。

本書は私と徳山の合作である。徳山が担当したのは、相手に悟られず、いかにして密かに中国の生産現場を取材するか、いわば“中国潜入取材紀行”ともいうべきものだ。 それが第2章と第4章の後半部分、第3章と第5章の全編である。それ以外は、私が「週刊文春」で書いたものを大幅に書き換えた。 なお、文中に出てくる人物の肩書は、原則取材時のものである。

本書を読まれた方が、自分が食べているものがどこでどうやって作られているか、一人でも多くイメージしてくれることを願っている。 特に、食べ物にもっとも影響を受けやすい思春期前の子供を持つ父母にこそ、そう願いたい。

奥野 修司

怖い中国食品、不気味なアメリカ食品
アメリカから輸入される牛肉には、国内では禁止されている女性ホルモンが、国産牛の600倍も含まれている。なのに、日本の政府や役所は、正確な数値を測ろうともしない。
中国からやって来る食べ物もそうだ。日本の子供たちが、中国の遺伝子組み換え米や有機塩素が濃縮した鶏肉を食べ続けたら何が起こるだろうか?
相手国から抗議されることを恐れ、見て見ぬふりを決め込む政治家や官僚たち。 しかし、これは、20年30年をスパンとした見えない戦争なのだ!




講談社文庫
2017年9月 / 799円(税込)

目次
第1章 ホルモン漬けのアメリカ産牛肉
第2章 知らずに食べてる中国産米の恐怖
第3章 中国食品に携わる人々の告白
第4章 中国産鶏肉が危ない!
第5章 総距離1万キロの中国食品潜入紀行
第6章 学校給食に入り込む中国食材
第7章 米国産危険食品
第8章 遺伝子組み換えはアメリカの国家戦略


奥野 修司(おくの しゅうじ)

1948(昭和23)年、大阪府生まれ。ノンフィクション作家。立命館大学卒業。1978年から南米で日系移民を調査する。 帰国後、フリージャーナリストとして活躍。1998年、「28年前の「酒鬼薔薇』は今」で、「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」を受賞。 『ナツコ 沖縄密貿易の女王』で、2005年に講談社ノンフイクション賞を、2006年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。 『ねじれた絆』『皇太子誕生』『心にナイフをしのばせて』『「副作用のない抗がん剤」の誕生 がん治療革命』など著作多数。
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