市民のためのがん治療の会
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『米国のがんの40%が過体重と肥満に関連』


メディカルトリビューン
女性の死亡原因の一位は大腸がんです。また、乳がんに最もかかります。両がんともに、食生活に密接に関係があります。
糖尿病患者さんのがんにかかる頻度は、そうでない方の2倍超を報告されています。肥満の原因は、「油」と「砂糖」です。
この2つは、がんの促進因子でもあります。メディカルトリビューンに興味深い記事がありました。お役に立てば幸いです。
なおこの記事掲載は、メディカルトリビューンの浅尾様のご許可をいただいております。
堂園メディカルハウス 院長 堂園 晴彦

なお、本稿は何度もご寄稿いただいております堂園メディカルハウス 院長 堂園 晴彦先生のご協力によるものです。 堂園先生に感謝申し上げますと共にメディカルトリビューン誌のご厚意に感謝いたします。
會田 昭一郎

米疾病対策センター(CDC)の月例報告「Vital Signs」によると、米国では1990年代以降、新規にがんと診断される割合は全体的に低下傾向にあるが、 過体重(BMI 25〜29.9)と肥満(BMI 30以上)に関連するがんについては上昇しているという。 "過体重・肥満関連がん"は、胃がん、肝がん、膵がん、腎がんなど13種あり、米国では2014年に約63万人が過体重・肥満関連がんと診断されており、がんと診断された全患者のうち約40%を占める。 また、米国では50〜74歳の成人のうち3人に2人が過体重・肥満である。

過体重・肥満関連がんは女性で多い

国際がん研究機関(IARC)により、過体重・肥満関連がんは、髄膜腫、多発性骨髄腫、食道腺がん、甲状腺がん、閉経後女性の乳がん、 胆囊がん、胃がん、肝がん、膵がん、腎がん、卵巣がん、子宮がん、大腸がんの13種であることが確認されている(図)。 このうち大腸がんについては、検診で異形成を発見することにより、予防が可能である。

今回の報告は、CDCと米国立がん研究所(NCI)が過体重・肥満関連がんの傾向を検討するため、 米国がん統計(USCS)のデータから2005〜14年分をレビューし、2014年のがんデータを解析したもの。

解析の結果、がんと診断された女性の55%、男性の24%が過体重・肥満関連がんであることが分かった。 非ヒスパニック系黒人、非ヒスパニック系白人は他の人種と比べて過体重・肥満関連がんのリスクが高かった。 また、黒人、ネイティブアメリカン、アラスカ先住民の男性も白人男性と比べてリスクが高かった。

図. 過体重・肥満に関連する13種のがん

多くの国民は過体重・肥満とがんの関連を知らない

今回の報告によると、2005年から2014年の間に、大腸がんを除いた過体重・肥満関連がんは7%増加しており、大腸がんはスクリーニングの効果によって23%低下していた。 過体重、肥満に関連しないがんは13%減少していた。大腸がんを除いた過体重・肥満関連がんは75歳未満の成人で増加していたことも分かった。 しかし、多くの米国人は過体重・肥満が幾つかのがん種と関連しているという認識がないという。

今回の報告を受けて、CDCのBrenda Fitzgerald長官は「米国人の大多数は推奨体重を超過しており、過体重や肥満はがん発症リスクを高めるため、今回の報告は懸念すべき材料である。 しかし、健康的な体重を維持することで、誰もががんを予防することができる」と述べている。

"健康"が最良の処方

CDCがん予防管理部門主任のLisa C. Richardson氏は「国民からがんの最良の治療について尋ねられれば、私は腫瘍学者として『"健康"ががんを含む慢性疾患を予防する最も良い処方である』と答える。 われわれ医療従事者は、国民が生活、仕事、学び、遊びの中で好ましい選択をするのに必要な情報を得られるよう、手助けをしている」と述べている。

CDCは、医療従事者が患者に対して行える具体的な援助策として以下の3点を挙げている。

  • ①患者の体重、身長を測定してBMIを算出し、健康的な体重の維持ががんの予防に役立つことについて助言する
  • ②肥満患者の体重管理に役立つさまざまな活動を含む、集中的なプログラムに肥満患者を参加させるようにする
  • ③患者と家族に、健康的な食事内容や身体活動への容易なアクセスを手助けするコミュニティーサービスを紹介する
    https://medical-tribune.co.jp/news/2017/1007511052/
    (慶野永)

堂園 晴彦(どうぞの はるひこ)

慈恵医大卒業後、国立がんセンター、慈恵医大講師・鹿児島大学産婦人科講師を経て1991年堂園産婦人科で在宅ホスピスを開始。 1996年有床診療所堂園メディカルハウス開院。通院・入院・在宅をコンビネーションしたホスピスケアを開始。
現在、堂園メディカルハウス院長。
著書:絵本「水平線の向こうから」(絵 葉祥明)と「サンピラー お母さんとの約束」(絵本田 哲也、北海道在住)、エッセー「それぞれの風景 人は生きたように死んでいく」 医学博士
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