市民のためのがん治療の会
市民のためのがん治療の会

『COVID-19問題の対応に思う』


市民のためのがん治療の会 顧問
北海道がんセンター 名誉院長 西尾正道

はじめに

人類と病原菌との戦いは永遠のテーマである。 がん患者さんの直接死因も2~3割は肺炎などの感染症である。 がんが進行し免疫力も低下して細菌や真菌などによる感染症が直接死因となり命取りとなる。 全ての命あるものは生き延びようとする。 がん細胞も生き延びるために増殖しやすい部位へ浸潤し、抗癌剤で叩かれれば薬剤耐性を獲得して対応する。 細菌も抗生物質に対して耐性をつくり、効果が薄れるために新たな抗生物質の開発が行われている。 その中で、ウイルスは多くは動物と共存しているが、変異したりする過程で人間にも病原性を持つこととなる。 ウイルスは生物の細胞内に入り複製し増殖するが、細胞はなく、代謝もないので生き物として扱うかどうかは生物の定義によるが、いずれにしても感染すれば病原性を持つ。 本稿では新コロナウイルスのパンデミックに対する日本の対応について私見と感想を述べる。

ウイルスと防護策について

ウイルスはDNA型とRNA型があるが、コロナウイルスはRNA型で1本鎖であるため容易に変異する。 10年程前に流行した新型インフルエンザもRNA型であり、日本は約1万人が死亡したが、死亡者数は年々減少しているが、2018年は約3800人がインフルエンザで死亡している。 通常の風邪も10~15%程度はコロナウイルスであるとされている。 日本の対策の基本となっている「3密」(密閉・密集・密接) を避けることは当然としても、これだけでは不十分であり、スペイン風邪が流行った100年前とは異なり、現在では感染症対策の基本は徹底的に検査して感染者を見つけて隔離することである。 4月13日の中国からの報告で飛沫がエアロゾルとなり4mまで飛ぶということであれば、ほぼ空気感染の状態です。 新コロナウイルスは約100nmですからマスクをしても通ります。 感染者がくしゃみなどして飛沫を飛ばすのを拡散させないためにはマスクは必要ですが、陰性者はマスクだけでは完全には予防できません。 またマスクも正しく隙間なく使用しなければ予防効果は落ちます。

しかし、飛沫は約5μm程度だとすれば、装着しないよりはマスクをしていたほうが感染のリスクは少なくなると考えられます。 6月11日に公開された報告(Lancet誌オンライン版2020年6月1日号)では、フィジカルディスタンスが1m以上の場合、感染リスクは約82%減少、フェイスマスクの着用は約85%減少、保護眼鏡で78%に減少するとされています。 資料1に以前に北海道新聞に掲載された図を使用してウイルスのサイズとマスクの問題を示します。

資料1 ウイルスのサイズとマスクの問題

最も高性能のN95のマスクは結核菌対策のために開発されたものですが、これでもウイルスは通過します。 300nmの微粒子を95%ブロックできるとされ、N95と命名されたのです。 しかし、このマスクは30分もすれば苦しくなり長時間使用できるものではありません。 通常のサージカルマスクは5μm程度の微粒子はブロックできるので、多くの飛沫は防げますが、より微細なエアロゾルまでブロックできるわけではないので、対応策の限界も知っておくべきです。

また、うがいや手洗いも感染予防のための基本的な対応ですが、100nmのサイズのウイルスは粘膜からでも体内に入るので、放射性微粒子の防護と同様な対応が必要であり、資料2に示す皮膚以外の汚染処理も心掛ける必要がある。 更にウイルスが付着してからの大まかな残存時間を資料3に示す。消毒の際などにも参考として頂きたい。

資料2 皮膚以外の汚染処理例

資料3 新型コロナウイルスの物質別最大残存期間

検査の問題

オリンピックが来年に延期となってからは、少し検査数がふえたが、いまだに十分とはとは言えない状況が続いています。 検査のための試薬を国立感染症研究所が保健所にしか供給しないために、現場の医師が必要と判断しても検査ができませんでした。 通常のインフルエンザは2~3日で症状を呈するが、コロナウイルスの場合は潜伏期が約2週間だとすれば、検査も容易でない現状では事態は悪化する一方です。 感染しても約半数が無症状で、3割が軽症で、重症化するのは2割だと言われており、無症状の人から市中感染が拡大するのです。

白鴎大学の岡田晴恵特任教授が、民間に検査を委託すると国立感染症研究所がデータを独占できないので、OBが邪魔していると言う趣旨の発言をして現状を説明しましたが、これが事実であれば、由々しき問題です。 また戦後に結核対策を中心として業務してきた厚労省・感染研・保健所・地方衛生研などの独善的・閉鎖的体質も問題があります。 特に731部隊の流れをくむ国立感染症研究所が研究事業として仕切るために行政検査とし、データを独占するために民間に検査をさせなかったように思います。

インフルエンザの抗原検査はクリニックレベルで保険診療として行っていますが、コロナのPCR検査も受診した医療施設で検査できるようにすべきなのです。 診察した医師が検査の必要性を感じて保健所にお願いしても、当初は4日間37.5度の発熱が続かなければ検査しないという馬鹿げた基準を基に保健所事務員の判断で検査できないという最低の対応が続きました。

発症までの潜伏期が長い感染症のパンデミックに対する対応は、まずは疑わしい症状があれば簡単に検査ができるようにすることが必要であり、 行政検査ではなく、臨床検査とか予防的検査という考え方も導入し、ドイツや米国のように無料とすべきです。「GO TO キャンペーン」に税金を使うのであれば、検査の無料化に血税を使うべきです。

また心筋梗塞の発作や事故などで救急救命に緊急入院する患者さんは検査で陰性が確認されるまでは、陽性者として扱い対応する必要があります。 またどんな病気でも入院予定の患者さんは、PCR検査をしてチェックするようにしなければ、院内感染が増え、より医療崩壊につながります。また感染リスクの高い医療従事者も定期的に全員検査すべきなのです。

資料4はOECD加盟国のPCR検査人数の比較です。 医療先進国と言える日本が如何に検査を絞っているかがわかります。 感染症対策の基本的な対応もしていないのが日本という国なのです。

資料4 OECD加盟国のPCR検査人数

PCR検査機器も全自動で行える機器がすでに販売され、海外では使用されていますが、日本は薬事法の承認が遅れて使用できない状態なのです。 日本の行政の対応の遅さも関係しているのです。 試薬も検査機器も製薬会社大手のロッシュから販売されているため海外では多くの検査ができているのです。 PCR検査は医学部病院だけでなく、大きな病院でも可能な施設もありますし、全国の歯学部や獣医学部や農学部などでも検査はできますので、本当に検査をやろうと思えば1日10万件程度は可能なのです。 政治家・専門家・有識者とやらも総合的な正しい知識を持たず、迷走しているのが、今の日本です。

また最近、タカラバイオは唾液を検体として2時間弱で最大5000件超のPCR検査ができる検査手法や、全自動操作で検査できる機器も開発されています。 国がこうした検査機器を購入し、コロナ対策を中心的な行っている全国の医療機関に配置して対応すべきなのです。

5月7日に専門家会議の長尾茂副座長は日本におけるPCR検査の少なさについて、①PCR検査体制を担ってきた国立感染症研究所と地方衛生研究所の体制が十分に整備されていなかったこと。 ②地方衛生研究所においては、はしかやノロウイルス、結核の検査を主に実施しており、新しい病原体について大量検査の実施は想定されていなかったこと。 などと弁解していたが、こうした実態を考えれば、医療施設や民間検査センターでも検査できる体制を早く構築すべきだったのです。

日本では厚生労働省令によって保険診療の中での健康診断が禁じられているため(保険医療機関及び保険医療養担当規則)、これも症状のない人を検査することのネックになっています。 3月6日からPCR検査は医療保険が適応されたので、慈恵医大では保険外として検査する代わりに検査価格を700円~800円に抑え、感染が判明したものに限って保険請求するなどの工夫をしていました。 しかしパンデミックの現状においては検査も特例として陰性者でもすべて保険診療とすべきなのです。 なお7月16日の政府の感染症対策分科会は無症状の人に対するPCRなど感染を確認する検査について、感染している可能性が高い人を除き、公費で行う行政検査の対象にしない方針で合意し政府に提言した。 何とも最低の対応である。

感染対策の医療体制と対応について

今回のWHOによるパンデミック宣言により、全世界が対応を迫られているが、日本の対応は少ない検査数で、3密を避ける対応に終始している。 北海道の緊急事態宣言も裏で安倍首相と連絡を取り合い、全国への緊急事態宣言の予備試験として行われた。 学校で一人も感染者が出ていないのに学校を休校にしたりして混乱を起こしたのは為政者の責任であるが、その休校とする必要性を医学的に論じられることもなかった。

対策を行っているというポーズにごまかされ、①デタラメなお上にも従順な国民性と、②マスク文化と、③握手やハグする慣習も無く、④ 世界的に見れば最も衛生的な生活住環境にある日本が欧米に比べて感染者が比較的少ないという状態にあります。 ただ感染者数に関しては検査を絞っているため全く当てにならないという問題もあります。

ちなみに慶應義塾大学病院で4月13日から4月19日の期間に行われた術前および入院前のPCR検査において、 新型コロナウイルス感染症以外の治療を目的とした無症状の患者さんのうち6%の陽性者(4人/67人中)が確認されているが、これは院外の市中で感染したものと考えられる。 この確率を東京都の人口で考えれば、1395万人x 6%=83.7万人となる。

また医療従事者は感染のリスクが高く、同病院の初期臨床研修医99名に4月1日から順次PCR検査を行った結果、18名(18.2%)が陽性となっている。 WHO事務局上級顧問の渋谷健司氏は『陽性と判明している人の10倍以上いる』と述べている。

武漢から帰国した男性に日本で初めてコロナが検出された1月16日から半年経つが、まだ充分な検査体制はできていない。

また日本感染症学会は、陽性であれば軽症者でも入院させる必要があり、医療崩壊するので検査を制限する方向で間違った指針を示した。 何とも国民の命を軽視した学会である。

国は習近平の国賓としての来日問題も絡んで中国への対応が遅れ、更に検査をしない姿勢はアベ政権と小池都知事が団子状態になってオリンピックの開催を最優先していたためである。 <女性自身>2020年3月24・31日合併号で、『病院関係者が怒りの告発!「新型コロナ陽性判定が大量隠蔽されている!」「感染者数の数字操作の指令が!」』と政府が指揮してオリンピック開催に固執していた姿が報じられていた。

ローマ帝国の悪政を隠すために、円形闘技場(コロッセウム)を作った手法を真似て、安倍首相は自分の悪政・詭弁・虚言などに眼を向けさせないために (復興)オリンピックを誘致したのであるが、 見識ある人間であれば、オリンピックに使う費用は福島県民に供給して復興を速めたであろう。

オリンピックの延期が決まり検査数が増えたが、まだ十分な検査ができていない。通常のインフルエンザは潜伏期間が短く2~3日で症状を呈するが、 新型コロナウイルス感染の場合は潜伏期が約2週間だとすれば、検査を絞ることは大間違いである。 感染しても半数以上は無症状であり、軽微な症状で終わる人が約3割であると報告され、治療などの医療行為が必要となる人は約2割だとすれば、できるだけ感染の有無を調べ、陽性者は隔離する対応が基本中の基本なのである。

歴史的には、結核死が激減したこともあり、1980年代に医療政策が変化し、結核などの感染症対策から生活習慣病対策へと変換した。 この流れで1984年に対がん10か年総合戦略(厚生省)が発表され、1994年 には保健所法が廃止され、「地域保健法」となり、保健所と人員の削減が行われた。 全国の保健所数は1994年には847カ所であったが、2020年には469カ所となり約半数に減少し、保健師数も激減した。

大阪市をはじめ、横浜市、名古屋市、北九州市などの政令指定都市では、各区に1か所ずつあった保健所が、現状では市全体で1か所しかなくなっている。 資料5に保健所総数の推移を示します。

また1保健所の保健師数も15~20人から 5~6人に減少した。 こうしたマンパワーでは到底パンデミックの対応はできないのです。 マンパワーが不足している保健所が検査まで仕切ること自体が無理なのです。

資料5 保健所総数の推移

医学が進歩した今日においても検査を絞り100年前のスペイン風邪の時代の対応をしている日本の馬鹿さ加減は目に余るものがある。

2000年代初頭の小泉政権のもとで「行政の効率化」がはかられ、経済的利益を生まない(だからこそ公的責任で担うべきなのだが)公衆衛生は軽視されるようになった。 2002年に健康増進法が公布され、保健師の役割も公衆衛生から国民の健康づくりの推進と生活習慣病対策が重点となり、2008年には特定保健指導が開始(結核検査廃止、糖尿病検査導入)された。

こうした流れの中で、感染症病床も減少した。 感染症病床は、一般病床とは区分され、病室の空気が外部に漏れないようにする空調構造を備えた陰圧隔離病床でなくてはならないが、その数は、1996年に9716床あったものが、2019年には1758床にまで激減している。 感染症病床以外の病床も削減が続き、1993年から2018年までの四半世紀で30万5000床が削減された。 また重症患者のための集中治療室(ICU)も、2013年には全国で2889床あったが、2019年には2445床に削減されています。

さらに安倍政権になって、社会保障改革と称して、「地域医療構想」により、医療費抑制策と病床削減はさらに加速した。 2014年には、病気になり始めた患者を主に診る「急性期病床」を削減し、安上がりの医療・介護提供体制を構築することを目的とした「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」が成立、 医療法が改正された。

地域医療構想のねらいの一つは、自宅で死んでもらうことにより医療費を削減することにある。 2018年に地域医療構想が出そろったが、地域医療構想の完遂による「必要病床数」を実現した場合、全国で15万6000床もの病床削減が必要とされ(2013年時点との比較)、地域に必要な医療機関や診療科の縮小・廃止がおきている。

また国は医療費抑制のために、医師数も抑えてきたため、日本の医師数は、人口1000人当たりでみると2.43人で、OECD加盟国のうちデータのある29か国中の26位にとどまる(2017年.OECD Health Statics 2019)。 世界一日本の医師の労働条件は過酷であるとも言える状態なのです。

最近の具体的な動きとしては、厚生労働省は、2019年9月、 公立・公的病院のうち地域医療構想において再編・統合の必要があるとする424の病院(公立257、公的167)の名称を公表し、病院の統合や診療科の縮小、入院ベッドの削減など、地域医療構想の具体的方針を1年以内に見直すよう求めた。 これではCOVID-19問題が無くても、医療崩壊を起こしているのは厚生省の愚策によるものなのです。 今後は更に地域医療は崩壊する事態となると予想されます。

幸い子供では鼻粘膜や咽頭粘膜の表面にはウイルスが結合するACE2(アンジオテンシン変換酵素2)という蛋白質が少ないため、 子供には感染が少ないとされているが、高齢者や糖尿病などの合併症を持っている人は感染すれば重篤化しやすく命取りともなりかねない。

今回のコロナウイルスでも既に多くの変異部位が報告され、多数の変異したウイルスが報告されています。 このため諸国の死亡者数を比較すれば、単に医療体制の差だけではなく、ウイルスの変異による毒性の強弱が関係していると考えられ、少なくとも武漢や日本と欧米のウイルスは毒性が異なっていると考えられる。 またウイルスに対する人体の反応は人種や民族による遺伝子の違いもあり、死亡率に関与している可能性もある。

資料6 コロナウイル感染症死亡者数

資料6に各国の死亡者数の資料を示すが、日本や東南アジアの諸国と欧米では大きな死亡者数の差が見られる。 ここまで異なるのはウイルスの毒性の強弱や宿主側の問題が関係していると推察される。

ウイルスも変異して武漢のウイルスよりも悪性度が高く変異したものが欧米で流行したのではないかと思っています。 また同じウイルスに感染したとしても日本人も含め、東洋人の場合は宿主側の遺伝子の違いが関係して欧米人と比較して死亡率が低いのではないかと思います。 この問題はいずれ遺伝子解析で判明されるかもしれません。

20年前に肺癌の分子標的治療薬としてイレツサという新規の抗癌剤が使用できるようになりましたが、この抗癌剤は東洋人には効果が高いのですが、欧米人には東洋人よりは効果が見られませんでした。 がんに関係した遺伝子に作用する薬剤でこうした現象が見られたことから、今回のウイルスに対する人体の反応は人種や民族によって多少の違いがあるのかもしれません。

最後に

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、7月20日時点で、世界の累計感染者数1,400万人超、死亡者数60万人を数える。 世界中で飛行機が飛び交い、人間の交流がある時代では、第2波・第3波のパンデミックも起こりえます。 その場合はウイルスの変異で毒性が強まり、より深刻な事態となるかもしれないので、生活習慣病だけでなく感染症対策を見直して検査や医療体制の構築が急がれます。

1796年にジェンナーが、天然痘予防接種(ワクチン)を開発し、1980年にWHOは天然痘撲滅宣言(最終症例は1977年)を出した。 この意味では克服された感染症は天然痘だけです。 その後、1882年にコッホが結核菌を発見し、1941年にペニシリンが臨床応用され感染症に対する治療薬が使用できるようになってからまだ80年にも満たないのです。

1931年にドイツの物理学者エルンスト・ルスカ(1986年ノーベル物理学賞)が電子顕微鏡を開発した。 電子顕微鏡が国内で製造開始されたのは1941年であり、これによりウイルスの姿が見えるようになりました。

急激に医学は進歩していても、まだまだ歴史は浅く、ウイルスに対する治療薬もほとんどないのが現状です。

2018年3月に米国で発生し、バンデミックとなりスペインが最初に報告したスペイン風邪は1918年9月に第2波となり、5億人が感染し、4000万人以上が死亡(第1次世界大戦での戦死者数は約1千万人)したと報告されています。 日本でも推定45万人が死亡しているが、第2波のほうが死亡者は多かった。 100年前のスペイン風邪の流行においては3密を避け、発症した人を隔離する対応しかなかったが、医学が進歩した今日においても検査を絞り100年前の対応をしている日本の馬鹿さ加減は目に余る。 感染者は施設に収容しなければならない「指定感染症」としたため、検査を絞り、また自宅療養とするなどして国自体が法律破りをしている国の対応に希望は見えてこない。

コロナ対策として病床を確保している医療機関には空床としていても、充分な補助金を出し、医療崩壊を防ぐべきです。医療職員は少ない人手で、マスクや防護服も不足する中、極度の緊張を強いられています。 厚生労働省は、感染対策や人員確保に必要な予算措置をしておらず、このままでは、介護施設での集団感染とそれによる死者も増大する可能性が高い。 病床の不足とともに、医療機関の経営も苦しくなっている。外出自粛の影響で(もしくは、病院内での感染をおそれ)、外来患者を中心に深刻な受診抑制が生じ、医療機関が経営困難に陥り、 閉院や休業、従業員の解雇を検討する医療機関が増加しています。 医療崩壊が叫ばれたが、今後は医療施設の経営上の問題から医療崩壊を呈する事態も危惧されます。 多くの公的医療機関は低い収支率で赤字を地方自治体からの補填・補助で経営を維持している施設も多いのである。 現状のままでは、COVID-19対応と関係なく、受診抑制により収益が低下した医療機関の経営的な問題から医療崩壊が起こることが危惧されます。

中世の宗教改革も当時の教会の問題だけでなく、ペストの流行が関係していたと言われています。 「神」を信じていても「命」は救われないと価値観に変化が生じたのです。 今回のパンデミックで価値観も死生観も見直され、人間が共に生きる社会の構築と経済活動の在り方も変化するものと思われます。

またマスクの8割は中国に生産を依存していたように、安価な海外の労働力に頼って国内で多くの必要なものを生産させていたサプライチェーンの体制も見直す必要があると思います。

FOXニュース、CNNテレビ、AP通信などの米国メディアは4月14~15日に、新型コロナウイルスについて「武漢の研究所から流出した可能性が高い」と報じ、 生物兵器の開発の疑いを示唆しているが、真相は闇の中である。また歴史の真実を考える場合は、「Follow the Money」の視点も必要である。 お金の流れを見れば裏の世界がみえてくることも多い。 「ワクチン」利権もこれからは絡んでくるし、世界制覇の手段は武器弾薬や核兵器だけではなく、遺伝子組換えや編集により、新たな生物兵器を製造できる時代となっています。

また「労働力」が富の源泉であった時代から、「情報」が富を生む世界となりました。 今年、2022年までに犬・猫にマイクロチップの埋め込みを義務化する法案が日本で成立しましたが、裏では人間に対してもこのような動きが進められています。 「ID2020」*1プロジェクトによって世界の77億人全てにRFID*2マイクロチップが埋め込まれる社会の実現化が目論まれているという情報もあります。 マイナンバーによる個人情報の把握なんてものではないレベルです。 COVID-19のパンデミックを機会に、感染者のクラスター調査のために必要だと言えるのです。 裏ではこうした管理社会の構築も目論まれている可能性にも警戒すべきです。

こうした嫌な時代となりつつありますが、、グローバル化して金儲けするのではなく、また人間一人一人が自己中心ではなく、社会正義や公平性や生命倫理をもって格差の少ない共同・共生の社会を目指したいものです。

*1 ID2020プロジェクト
 ID2020プロジェクトに共同参加しているのは、マイクロソフトと複数のIT企業、世界最大の経営コンサルティング会社のアクセンチュアや製薬会社などを含む150社、 ロクフェラー財団、GAVI(ワクチンと予防接種のための世界同盟)と複数の国連機関である。プロジェクトの目的はRFIDマイクロチップを全ての人に埋め込み、国際的なデジタル認証システムを構築することである。

*2 RFID (Radio Frequency Identification)とは、ID情報を埋め込んだICチップから、電波を使って管理システムと情報を送受信するデバイス。(Wikipedia : RFID)


西尾 正道(にしお まさみち)

1947年函館市出身。札幌医科大学卒業。 74年国立札幌病院・北海道地方がんセンター(現北海道がんセンター)放射線科勤務。 2008年4月同センター院長、13年4月から名誉院長。 「市民のためのがん治療の会」顧問。 小線源治療をライフワークとし、40年にわたり3万人以上の患者の治療に当たってきた。 著書に『がん医療と放射線治療』(エムイー振興協会)、 『がんの放射線治療』 (日本評論社)、 『放射線治療医の本音-がん患者-2万人と向き合ってー』 ( NHK出版)、 『今、本当に受けたいがん治療』(エムイー振興協会)、 『放射線健康障害の真実』(旬報社)、 『正直ながんの話』(旬報社)、 『被ばく列島』(小出裕章共著・角川学芸出版)、 『患者よ、がんと賢く闘え!放射線の光と闇』(旬報社)など。 その他、専門学術書、論文多数。
Copyright © Citizen Oriented Medicine. All rights reserved.