市民のためのがん治療の会
市民のためのがん治療の会

『命を救う新たな選択肢を!
(クラウドファンディングによる寄付募集中:肺がんに対する新たながん免疫療法の医師主導治験を利用した研究)』


堀池 篤
昭和大学医学部 内科学講座 腫瘍内科学部門、准教授
本医師主導型臨床試験責任医師
角田卓也
昭和大学医学部 内科学講座 腫瘍内科学部門、主任教授
昭和大学病院 腫瘍センター長
肺がんは部位別の死亡原因で男性では1位、女性では大腸がんに次いで2位、男女合計では1位という難治がんだ。 患者としては一刻も早く有効な治療が行われるように祈るばかりだ。 ここで注目されているのが手術、放射線療法、抗がん剤に続く第4の治療といわれるがん免疫療法だ。 当会は約10年ほど前からがん免疫療法に注目し角田先生にもご指導いただいていたがその間様々な研究が積み重ねられ、 今回は、免疫療法にネシツムマブという分子標的治療薬を併用した新たな治療法の医師主導治験が多施設協同治験として行われることとなった。
問題は医師主導治験ということで研究費が限られており、 より効果がある患者を患者の持っている免疫能や腸内細菌で探る研究の費用をクラウドファンディングで広く多くの皆様から募ることとした。 研究の意義をご理解いただき、広範な皆様のご支援をお願いいたします。
以前から「がん医療の今」にもたびたびご寄稿いただいております角田先生に堀池先生をご紹介いただき、堀池先生にご寄稿をおまとめいただきました、ありがとうございました。
(會田 昭一郎)

2人に1人が「がん」になる時代。 中でも肺がんは、進行してから発見されることが多く、従来からの抗がん剤治療では根治は難しいことから、死亡率はいまだ高く、 新型コロナウイルス感染症による死亡者をはるかに超える年間約75,000人(2019年)もの患者さんが亡くなっており、現代の医療においても治療が難しい病気のひとつです。 しかし、がん免疫療法の登場により一筋の光が見えてきました。がん免疫療法とは、従来の抗がん剤とは異なり、自らの「免疫の力」を利用してがんを攻撃する治療法で、 一時的な効果しか期待できなかった従来の抗がん剤とは異なり、一部の患者さんで治療の効果がカンガルーの尾のように長く続く現象がみられるようになっています。 我々は、この特徴を「カンガルーテール現象」と呼んでいます(図1)。

昭和大学では、がん免疫療法の効果を更に向上させるべく、 ペムブロリズマブという免疫チェックポイント阻害薬とネシツムマブという分子標的治療薬を併用した新たながん免疫療法を国内11施設と協働で医師主導治験(臨床試験実施計画番号:jRCT2031200248)として実施しています(図2)。 対象は、がん薬物療法の治療歴のないPD-L1高発現進行非小細胞肺がん患者さんで、50名の患者さんの参加を予定しています。 がん細胞を増殖させる「EGFR」という分子を抑える薬であるネシツヅマブとがん細胞を攻撃する免疫細胞の力を守る薬であるペムブロリズマブを併用することで、免疫のブレーキを解除し、 増殖のアクセルを抑えることで、がん細胞を直接攻撃することなく、がん細胞周囲の環境を制御し、患者さん自身の力でがんを治す新たなコンセプトの治療である(図3)。

また、本研究では、患者さんから頂いた血液、便、がんの組織を用いて、患者さんの腸内細菌や免疫能を調べることで、どういった患者さんが免疫療法の効果があるかを調べ、 薬を投与する前に患者さんに「効果があるか」を予測できるようにし、早期に治療できることで救える命を増やすことを目指しています(図4)。


図1.がん免疫療法におけるカンガルーテール現象

しかし、今回は治療薬を開発する企業ではなく医師が中心となり治験を行うため、企業中心で行う治験と比べ、潤沢な研究費がありません。 そこで、患者さんの腸内細菌や免疫能を調べる研究をクラウドファンディングという制度を利用して、広く募ることになりました(URL:https://readyfor.jp/projects/kangarootail)。 本クラウドファンディングは、NPO法人肺がん患者の会ワンステップ様にもご賛同を頂き、応援企画のYouTubeライブを実施して頂きました(配信URL:https://youtu.be/0kOrkrVlJgA)。

新型コロナウイルス感染症により、医療ひっ迫と言われ久しいですが、がん治療の進歩を止めてはなりません。 がん免疫療法により、多くの患者さんが、「がん」から解放される日が来るよう、その道しるべとなる本研究の費用を、ぜひ応援お願い致します。


図2.K-TAIL202医師主導治験実施体制

図3.ネシツムマブ+ペムブロリズマブ療法のコンセプト

図4.どのような患者さんがカンガルーテールになれるのか?

角田 卓也(つのだ たくや)

1987年和歌山県立医科大学卒業後、同大学第二外科助教を経て2000年東京大学医科学研究所付属病院外科講師。 同院准教授を経て2006年ワクチンサイエンス株式会社、代表取締役・社長。 2010年オンコセラピーサイエンス株式会社、代表取締役・社長。 2015年メルクセローノ株式会社、MA Oncology部長を経て2016年昭和大学臨床薬理研究所臨床免疫腫瘍学講座・教授、 2018年昭和大学医学部内科学部門腫瘍内科学部門・主任教授、昭和大学病院腫瘍センター長
1992-1995年City of Hope National Cancer Institute (Los Angeles)留学、同講師就任
医学博士(テーマ:腫瘍浸潤リンパ球の基礎的・臨床的研究)

堀池 篤(ほりいけ あつし)

1997年香川医科大学(現:香川大学医学部)卒業後、 同大学第一内科医員等を経て、2002年-2004年国立がんセンター中央病院内科にがん専門修練医(治療開発専攻)として研修後、 2004年癌研究会附属病院内科に赴任。 2012年がん研究会有明病院呼吸器内科医長に昇格、同病院早期探索臨床試験推進室兼務、 2019年昭和大学医学部内科学部門腫瘍内科学部門准教授に就任。 一貫して、肺がんの薬物療法、治療開発に従事。医学博士。
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