市民のためのがん治療の会
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『国際禁煙デーに向けて:インクルージョン~未成年喫煙者問題』


NPO法人肺がん患者の会ワンステップ
理事長 長谷川 一男
5月31日は「世界禁煙デー」です。例年「がん医療の今」では「たばこ問題情報センター」の渡辺文学代表理事にもご相談し、禁煙関連情報提供を行っております。
今年も渡辺代表にご相談し、NPO法人肺がん患者の会ワンステップの長谷川 一男理事長にお願いすることといたしました。
ご多用の中快くご寄稿いただきました長谷川理事長に感謝申し上げます。
(會田 昭一郎)

2018年7月に健康増進法の一部を改正する法律が成立し、2020年4月1日より全面施行されました。 これによって飲食店や路上で、受動喫煙の被害に合う状況は少なくなりました。 うれしいことです。


私たちは2019年より、「結心(けっしん)」という禁煙を応援するプロジェクトを行ってきました。 きっかけは、法律の成立に向け、肺がん患者対象に取ったアンケートです。 その中に、肺がん患者になってなお、家族から受動喫煙を受け続ける患者が6%ほどいました。


妻が患者で、夫が喫煙者というパターンがほとんど。 妻よりも、タバコが大切だというメッセージが聞こえてきます。 そこに介入。 今まで8名の禁煙成功者が出ました。

こちらのVTRの方は、旦那さんを禁煙させました。 夫婦円満になった姿を見てやってくださいませ。 3分ほどのVTRです。

さて、ここからが今回の本題です。

私たちは、上記した「結心」の活動で、ある親子と出会いました。 肺がん患者の母親と、タバコを吸う息子です。 16歳。未成年でした。

まず皆さんに聞いてみたいです。 未成年の喫煙者に対してどんなイメージをお持ちですか?
いきがっている…
どうしようもない…
そんな感じでしょうか。 普通、そんな風に思うと思います。 私もそう考えていました。 では、もしその子がたばこをやめたがっているとしたら。 依存に陥ったにも関わらず、誰にも言えず、どうしていいかわからないとしたら・・・。 周りの大人はそれを知らず、もっと言えば世間体が悪いと隠し、放置している状態だとしたら・・・。

聞いてみると、想像した通りです。 気づいたときにはもう遅く、タバコをやめられなくなっていたそう。 依存に陥り、助けを求めていました。 母は肺がんの患者です。 病気で苦しんでいるのになんでそんなことをするんだ。 学校にも警察にも行けない。 このまま20歳まで放っておくしかないとあきらめていました。

私たちはすぐさま行動を起こすことにしました。 その経緯をまとめて、VTRを2本作成し、公開しています。 ぜひ見ていただければと思います。 1つは「たばこをやめたい君へ」内容は、そのまんまです。 やめたいと思っている若者が禁煙外来に行くまでが描かれています。

みなさん、禁煙外来が未成年にも開かれているって知っていました? 20歳未満は法律でたばこを吸ってはいけないです。 だから、犯罪者であり、禁煙外来を受けられないという考えは間違っています。 社会はよってたかって子どもを守ろうとしています。 こういうの、インクルージョン(社会的包摂)というんですよね。 私は最近知りました。

もう一つは、「たばこを吸う子ども(未成年)をもつおうちの方へ」
母親がまっすぐに私たちに語り掛けます。 子どものSOSを見逃しているかもしれないこと。 子どもを救うのは大人の役割であること。

VTRの中にある母親の手紙を抜粋します。

初めまして ゆうと言います。 3人の子供を持つ保護者です。 この VTR を見ているということはお子さんがタバコを吸っているということですよね。 どうか力になってあげて欲しい。 力になれるのは大人しかいません。 そんなことを今からお話ししたいと思います。

皆さん子供がタバコを吸うとき好きですっていると思っていませんか? 行っても言うこと聞かないしと諦めているかもしれません。 でも もしやめたいと苦しんでいたら・・・子供は悪いことと分かっていながら、好奇心でタバコを吸ってしまいます。 なぜなら私たち大人が子供には吸えない嗜好品として、身近なもの、 魅力的なものとして、世の中も喫煙をプラスイメージで伝えているからです。

日本には未成年者喫煙禁止法という法律があり20歳未満のものは喫煙を禁じられていますが、 これは子供の体を有害な喫煙から守るために制定されているのであって、喫煙している子を処罰するための法律ではありません。 子供達は被害者です。 タバコを吸っている子供を叱っても、タバコを取り上げても何の解決にもなりません。 タバコのニコチン依存は年齢が低いほど早く起こります。 もう子供が一人でタバコをやめることは困難なのです。 だからこそ大人の私たちが助けてあげなくてはいけないのです。 未熟なのだから子供は何度間違ってもいいのです。 私も未成年の子供がいます。

私の息子も 16歳でタバコを吸っているのを知りました。 母親である私が肺がんという大病をして苦しんでいる姿を間近に見ている息子が吸ったのです。 毎日怒り続け、タバコを見つけては捨てました。 警察に連れて行こうかとも考え、毎日悩みました。 私も自分の病気に向き合わないといけないのにそれどころではない。 もう20歳になるまで仕方ないのかなと思っていましたが、2016年から未成年でも禁煙外来で治療できるという情報を聞きました。 息子も依存で苦しんでいることも知り、本人にも「タバコがやめることができないのは依存という病気らしいよ」と伝えました。 すると本人の口から「お母さん病院へ連れて行って」言ってきたのです。

未成年でも見てもらえる病院を探しました。 通院は3ヶ月間 計5回とのこと。 お医者様も言っています。 本人が辞めたいという意思が非常に大事なことだと。 未成年は生意気で未熟です。 気持ちが変わる前に未成年を見てくれる病院を探して連れて行ってあげてください。 そしてその勇気を「ほめて」あげて欲しいのです。 必ずやめることができます。 タバコの依存という病気から、世の中の偏見から、守ってあげてください。 よろしくお願いします。

厚労省によれば、日本では未成年の喫煙者は激減しているといわれています。 高校生の毎日喫煙者は推定35,131人。 その中にどれくらい、VTRに出てくるようなたばこをやめたい若者がいるかはわかりません。 でも、いますよね。 みなさんの何かのきっかけになれば幸いです。


長谷川 一男

NPO法人肺がん患者の会ワンステップ 理事長。
神奈川県在住。52歳。日本大学芸術学部卒業。
肺がん。ステージ4。2010年に発病し、現在13年目。
ワンステップのビジョンは肺がんの患者・家族の「生きる勇気」を支え、肺がんのない世界を目指す。
活動には3つの柱があり「仲間を作る」「知って考える」「アドボカシー」
1ヶ月に1回のペースでおしゃべり会開催。HPとブログにて、様々なテーマで情報発信している。
現在、日本肺癌学会ガイドライン委員。神奈川県がん教育協議会委員など。
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