市民のためのがん治療の会
市民のためのがん治療の会
伝染病対策はどうなっているのか

『道民37,328人の声を無視した道の官僚体制は許せない!!
「日本脳炎ワクチンの定期接種」は本当に北海道に必要なのか?(1)』


ワクチントーク北海道 代表 荻原敏子
市民のためのがん治療の会では「がん医療の今」No.278(2016年6月28日付)で「ちぐはぐな感染症対策『ジカ熱対策にとって大切なこと』」として医療法人社団鉄医会理事長の久住 英二先生にご寄稿いただいたところである。(http://www.com-info.org/medical.php?ima_20160628_kusumi
感染症対策は公衆衛生の面からも大切な問題で、最近もおたふく風邪(流行性耳下腺炎)の流行や、妊娠20週頃までの女性が風疹ウイルスに感染すると、おなかの赤ちゃんが目や耳、心臓に障害が出る「先天性風疹症候群」の原因となる風疹なども問題になっている。
ところが北海道では日本脳炎の発症が無いにもかかわらず、日本脳炎ワクチンの定期接種が行われることになるなど、一体、公衆衛生行政はどちらを向いて行われているのか問題となっている。
当会の名称「市民のためのがん治療の会」はあだやおろそかにつけたわけではなく、医療が本当に「市民のため」に行われているのかどうかを検証し、「市民のため」に行われるように普及啓発し、政策提言を行ってきている。
今回は北海道における「日本脳炎ワクチンの定期接種」についてワクチントーク北海道 代表 荻原敏子氏にご寄稿いただいた。長文なので3回に分けて連載させていただく。
(會田 昭一郎)

病気の発生がなく、これまで定期接種とされなかった北海道で、なぜ日本脳炎の予防接種が始められることになったのか。

日本脳炎の予防接種について、北海道での定期接種化についての議論がされるきっかけは、北海道に転居してきた住民が総務省に対して、北海道で日本脳炎ワクチンを定期接種で受けられないことに対する苦情申し立てをしたことから始まったとされています。これをうけて、総務省が厚労省に検討するよう要求をしました。一方で札幌の医師会をはじめ、2014年7月には道・医師会なども定期接種の署名活動などを行ったこと等を受け、知事もこの問題を積極的に検討して対応をするかとの報道もなされ、北海道でも定期接種の論議が始められました。

1.はじまりは、新道民の苦情申し立て?

総務省行政評価局は、行政苦情救済推進会議の意見を踏まえて、関係省庁等に審議の斡旋をする機関です。推進会議では、2014年8月22日に厚生労働省に対して、北海道における日本脳炎に係る定期の予防接種を実施することについての検討を要請しました。これに対して、当初は厚労省も道の保健福祉部も、定期接種化については、知事のこれまでの対応を見直すべき理由はないが、判断は知事が行うものという姿勢でした。

そこで、私たちは、日本脳炎ワクチンについては、北海道以外の地域においても、流行の実態や副作用の重篤さから定期接種を中止すべきところ、北海道においては、殊更に定期接種化(区域指定を外す)すべき科学的根拠もなく、厚労省等も消極的見解を明確にしている以上、区域指定をはずさないよう、要望をあげました。

北海道で実施されない法的根拠
予防接種法第5条2項に基づく予防接種施行令第2条により、日本脳炎の発生状況等を検討して、予防接種を行う必要がないと認められる地域を都道府県知事が指定することができるようになっています。この規定に基づき、従前から、日本脳炎ウイルスのまん延が少なく患者がほとんど発生していない北海道では、日本脳炎の定期予防接種は実施されていません。(感染症情報センターのQ&A)

2.東京と北海道で導入反対の動き

2014年10月9日、「ワクチントーク全国」代表の母里啓子さん、コンシューマネットジャパン理事長の古賀真子さんたちと道福祉部に対し北海道には日本脳炎の患者がいないこと、媒介する蚊がいないこと、全国的にも日本脳炎の患者は一桁台であることなどを指摘し、「区域指定の継続」を求めました。

2014年9月10日付 「北海道で日本脳炎予防接種の定期接種を行なわないよう求める要望書」を高橋はるみ道知事に提出し下記の5点を申し入れしました。

国及び自治体における疫学的実情把握に基づきこれまでの科学的判断を踏襲すべきです
日本脳炎予防接種を定期接種化したら不利益のほうが大きい
日本脳炎自体の発症と予防接種について、全国的にも接種自体に疑問が大きい。
1人の子どもについて通算4回の接種が必要であるが、費用対効果に疑問がある。
死亡を含む重篤な副作用が他のワクチンに比較しても多く、接種する根拠がない。

また母里さんたちは厚労省の審議会でも意見陳述を行い、私たちは「感染症流行調査専門委員会」への公開傍聴に参加するなどこの問題の子どもの体に及ぼす影響の重大さを考え真剣にとりくみました。

3.道の審議や報告書は初めから導入ありき

ところが、道保健福祉部は、2015年2月「感染症危機管理対策協議会流行調査専門委員会」で議論をしたとし、3月30日感染症危機管理対策協議会で2月の議論を報告し「道における日本脳炎予防接種に関する報告書」 を承認しました。

2015.2.5〚感染症委員会〛公開傍聴した結果次の問題点が懸念されると考えました。

定期接種の必要性が明確でない・・必要性がない
ワクチンの安全性について慎重審議されていない
費用対効果の試算が不明確
自治体が実施主体であるとしているが、判断することに対して報告書は「技術範囲」逸脱して、結論を明記している。しかし、具体は自治体に丸投げしている。
専門委員会は、「指定枠をはずし、定期接種が必要である」という報告書素案を3月に提出した。

その後、北海道議会保健福祉委員会の議員などに説明し了解を得たとして、7月29日の感染症危機管理対策協議会で最終決定をし、知事に報告をしたものです。

4.知事の判断と私たちの取り組み、子宮頸がんワクチン問題も同時に、

高橋はるみ知事は、2015年8月7日にこれまで区域指定を行い北海道のみ実施をしていなかった日本脳炎ワクチン定期接種を、平成28年度は北海道でも実施することを決め、8月10日各市町村に通知を出しました。2014年10月以来、度重なる抗議や要請や署名活動を行い、地域指定を継続し定期接種とさせないことを懇願してきましたが、私たちの声は届かずとても残念です。

私たちは、2015年4月5日開催された「ワクチントーク全国集会」に参加し、日本脳炎の問題を学習し、危機感を覚え北海道でのとりくみを急がなければならないことを痛感してきました。5月24、25日両日古賀真子さんを講師に「ワクチン被害を起こさない集会・学習会」(70名超の参加)を開催し、子宮頚がんワクチン被害の実態や「道における日本脳炎予防接種報告書」の問題点などを学習しました。ここでは、「子宮頚がんワクチン接種の中止」と「日本脳炎ワクチンの定期接種化をさせない」ことを道に要請する署名を実施することが確認された集会となりました。5月25日には、古賀真子さんをはじめ14団体50名で道保健福祉部を窓口に高橋知事に対し「北海道で日本脳炎予防接種の定期接種を行わないよう求める再要請書」で次の6点の要請事項を要求し要請を行いました。

要請内容

病気がないところに全国的にも中止すべきワクチンを導入することについては、知事の政策判断が問われます。日本脳炎ワクチンはワクチンの必要性、安全性、有効性を検証し、全国的にも地域性に鑑みて定期接種の中止を再検討すべき時期です。逆行してあえて定期接種とすることはやめてください。

報告書は病気の怖さを強調し、豚の抗体価、媒介蚊発生の可能性を強調していますが、科学的な判断といえません。「患者が出てからでは遅い」のではなく、不可避的な「副反応・副作用」被害が出てからでは取り返しがつかないとの観点から区域指定を継続してください。

(転出入者はほぼ20歳以上)
  • 本道から転出する者は、昭和45年の道民の12.2%となり、ピークとなっているが、このうち、日本脳炎患者の発生がある関東以西に転出した者は昭和45年の道民の10.9%である。
  • 平成17~21年に本道から転出した者の数は平成17年の道民の6.2%であり、このうち関東以西に転出した者は平成17年の道民の5.5%である。他都府県から本道へ転入する者は、昭和46~昭和50年に昭和50年の道民の8.0%となり、ピークとなっている。また、平成18~22年に本道に転入した者は平成22年の道民の4.6%である。
  • 本道から他都府県へ転出する者の割合は、20~24歳、25~29歳が高く、次いで30~34歳が高くなっている。平成17年当時、日本脳炎定期予防接種対象の年齢が含まれる0~14歳で本道に居住していた者のうち5年後の平成22年の国勢調査実施時に道外に転出していた者の割合は3.4%、また日本脳炎患者の発生がある関東以西に転出していた者の割合は3.0%である。
他都府県から本道へ転入する者の割合は20~24歳、25~29歳が高く、次いで30~34歳が高くなっている。

国内外を含め流行地域への転出・旅行等については必要な時期に接種することで足ります。定期接種となれば、多くの子どもたちが、予防接種のリスクを背負うことになります。どうしても希望者がいれば任意接種で対応してください。

(ワクチンによる接種を維持することで、若年層の感染を防ぐことができる?)
  • 厚労省のデータによれば、接種率自体も、第一期初回接種2回が80%、初回追加接種は50~75%、二期接種は50~60%とされており、接種率は感染を防御する程度に至っていないと考えられます。(母里啓子さん見解)
  • 報告書は保有率の低い世代に患者が多く発生しているから、抗体保有率を上昇させることが、日本脳炎を予防する感染症対策となる。(と断言)しかし、満回以上の接種が必要。

報告書は、「きめ細やかに有効性、安全性等を勘案して、法に基づく予防接種の政策的必要性をどう判断したか、地域的な事情も十分に斟酌しての合理的な予防接種の制度施行であることを説明すべき」としながら、本報告書の内容は到底道民を納得させられるものではありません。知事は、北海道独自の疫学調査も踏まえ、道民の意見を丁寧に聴取し、報告書にいう、「稀に発生する副反応報告を合理化できる程度の政策的必要性があること」を明確に説明できる、政策判断を行ってください。

政策的必要性とは?
  • 日本脳炎は、主に集団予防を目的として行われるA類疾病の一つに該当する。
  • 第2項は、地域によって定期の予防接種を行わないことができる場合を定める規定である。定期の予防接種は、海外又は国内における流行状況に照らして定期の予防接種が疾病の発生及びまん延防止のために必要であることを含む諸条件を総合的に勘案して、稀に発生する副反応報告を合理化できる程度の政策的必要性を有すると判断される場合に政令で規定される。当該政令では、疾病の種類の単位で規定がされるところであり、その対象者について、地域を限って、例えば居住地域の要件を定めることも法制上可能であるが、特に、本項では、政令で定める疾病について、都道府県知事が、地域における当該疾病の発生状況等を勘案して、当該都道府県の区域のうち当該疾病にかかる予防接種を行う必要がないと認められる場合に、予防接種を行わない区域を指定することが可能であることを規定するものである。予防接種は、稀であるが副反応による健康被害が不可避であることから、できる限り、きめ細やかに有効性、安全性等を勘案して法に基づく予防接種の政策的必要性を判断すべきであり、地域的な事情も十分に斟酌して合理的な予防接種の制度施行が行わなければならないとしている。
  • (中略)

行政支出も莫大です。交付金が日本脳炎ワクチンに支出されれば、他の行政支出のどこに影響がでるのかについても道民に丁寧に説明してください。

日本脳炎の定期接種化問題だけでなく、子宮頸がんワクチンや乳児期の同時接種による死亡が問題となっています。道民に対して、定期接種とされたすべてのワクチンの「副反応・副作用」を知らせ、接種を「受ける」「受けない」の選択は本人、保護者の意志であり強制するものではないとの情報提供をおこなうことを強く求めます。(文中囲みは古賀氏資料より引用、以下同様)

5.道民の多くの反対署名を無視した道の姿勢は?

全道の道民のみなさんから集めた署名は7月29日、「子宮頚がんワクチン接種中止と被害者救済」を求める36,213筆の署名、「日本脳炎ワクチンの区域指定継続を求める」35,243筆の署名を持参し、14団体15名で再度要請を行いました。その席で道保健福祉部は「多くの道民の思いを重く受け止め、実施時期を含め慎重に判断する」との見解を示したことから、今後も署名を持参し、お願いに上がることを通告しました。しかし、驚いたことに、署名を受け取ったその4時間後に道は「感染症危機管理協議会」と「感染症危機管理対策虚偽会流行調査専門委員会」を開催、最終決定をしたもので、道民の声に全く耳を傾けない誠意のひとかけらも見られない官僚体制そのものの姿勢に憤りを覚えるものです。私たちは、8月11日の新聞報道で道福祉部が市町村に通知を出したことを知り、すぐ文書で抗議をするとともに、8月25日道保健福祉部に対し14団体15名で撤回を求めて下記事項について抗議と要請を行いました。

「日本脳炎ワクチンの定期接種化決定」に対する抗議と要請・質問について(再)

①.
高橋はるみ知事は、7月29日の北海道感染症危機管理協議会の意見をふまえて、定期接種化を決定しました。このことについて、行政判断として、どのような根拠に基づき定期接種化の判断をされたのか。また仮に副作用が発生した場合には、区域指定を外したこととの関連で、どのように慎重に対応していく予定であるのか不明確である。以上の件について、道民に明確な根拠を示すこと。

②.
定期接種と決定したまでの具体的経緯を示すこと。

③.
定期接種化した時の接種費用は100億円単位という莫大な行政支出が必要であり、北海道負担は11億円にもなるとされています。費用対効果面からもこれらの費用は、未来ある子どもたちのために使われるべきと考える。交付金が日本脳炎ワクチンに支出することになれば、行政支出のどこに影響がでるかについて、丁寧に道民に説明すること。

④.
日本脳炎の感染リスクがほとんどない北海道で、日本脳炎ワクチンの「定期接種化」をしないこと。仮に接種するとしても道の責任において各自治体に依頼するだけではなく、道民に対して予防接種の「副作用」の実態、「強制ではない」ということをわかりやすく説明し、「受けない」判断も権利として保障すること。

⑤.
副反応の実態などの具体的な数字のある資料を作成すること。

⑥.
実施する場合は、副反応の子どもが一人でもでた場合は、日本脳炎予防接種の区域指定継続とするなど、見直しをすること。

⑦.
副反応症状が出た場合には、迅速に救済を行うこと。

6.日本脳炎ワクチンについての正確な情報提供を求めて

結果として「日本脳炎の区域指定解除」は撤回できなかったものの、「日本脳炎についての十分な情報提供を行う。」「保護者や本人に分かりやすい内容とする。」「強制するものでない。」「副反応などを記載したパンフレットを作成することも検討する。」「接種医に対しても注意事項を遵守するよう指導する。」 などの見解を引き出すことはできました。今後も継続審議となりました。

今後は、市町村段階での要請となることから、8月27日には民主党女性議員の会に協力依頼を行いました。また、9月1日保健福祉委員会にて民主党中川道議が日本脳炎ワクチン定期接種化について副反応、区域指定解除、救済措置、保護者、接種者への情報提供など鋭く追及しました。道はリーフレットなどのひな型を作成するとしたことから、選択制、副反応全例調査、強制しないことなど私たちの要求導入を図りたいと思います。

7.子宮頸がんワクチンへの請願書と日本脳炎ワクチンへの請願書提出

2015年10月議会に向けて同9月11日下記の2つの請願書を提出しました。:市橋、須田道議の連名で議会へ提出しましたが、採択は得られませんでした。今後は3年半の継続審議となりました。

「子宮頸がんワクチンの接種中止・被害者救済を求める請願書」
「日本脳炎ワクチンの区域指定継続と「受ける側の選択権」の保障を求める請願書」

略歴
荻原 敏子(おぎはら としこ)

ワクチントーク北海道代表:元札幌市養護教諭、40年間養護教諭を経験し子どもたちの感染症やインフルエンザワクチンの効果に疑問を持ち続けた。日本脳炎ワクチン定期接種問題に関連し北海道にもワクチントークを立ち上げた。
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